#5 博多でうどんという選択肢。ごぼう天・考

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宗像の大島からは無事に脱出することができた。今日はこれからさらに西へ進み、最終的には佐賀県の唐津で宿泊する予定だ。まだ先は長い。

途中、博多で途中下車した。ちょうど夕食時だ。そうなるように工程を組んでおいたのだ。とは言え、使える時間は1時間弱しかない。それより遅くなると唐津への到着がかなり遅い時間になってしまう。もうほどほどに疲れてきてもいたし、夜はなるべく早く休みたい、そう思っていた。

2308九州_博多駅

さて、何を食べるか、それも大きな問題だ。博多といえば真っ先に思い浮かぶのは豚骨ラーメンだろう。今回の旅のうち、どこかでタイミングが得られないかと考えていた。しかし、今はどうもそのタイミングではない。これが腹具合と相談した結果として導き出された結論だった。もう少し軽いもの、例えばうどんはどうだろう。

博多ラーメンのイメージが強すぎるために影が薄くなってしまっているが、博多うどんというも名物の一つだ。柔らかめの麺、いりこやアゴ(トビウオ)で取った出汁の甘めのつゆが特徴である。今日はこれに決めた。

駅の近くで適当な店を探して入る。時間も限られているし、店探しに時間を取りすぎるのは得策ではない。丸天とごぼう天が乗ったうどんを注文した。

料理を待つ間、店内の様子を観察する。駅から近いだけあって混雑していた。店員さんは次々に訪れる客の交通整理に追われている。時間の許す限りゆっくりしていたかったが、少しでもお店の迷惑にならないよう、食べたらさっさと退店しようとこのとき思った。

やがて料理が運ばれてきた。丸天は魚のすり身を平たい円形にして揚げたもの。「天」と言っているが天ぷらではない。一方でごぼう天はごぼうに衣をつけて揚げたもの、つまり天ぷらだ。ごぼう天というと通常、練り物でごぼうを巻いたおでんダネを思い浮かべるが、博多では違うようだ。

2308九州_博多うどん

このごぼう天には良い意味で驚かされた。こういったトッピングの場合、せいぜい2~3本乗っているのが相場だろう。しかしこの店では5~6本ものごぼう天が乗せられていたのだ。しかも1本1本が大きい。

実は料理が運ばれてくるのを待つ間、ごぼう天がトッピングされているメニューが妙に多いことには気がついていた。もしかしたらごぼう天は博多うどんのトレードマークなのかもしれない。そう思った。

ごぼう天は歯ごたえがあり、ごぼうの土の風味が活きていた。丸天もちゃんと魚の味がする。麺の柔らかさと香ばしい出汁の味は、くたびれかけている体に染み込むような優しさだった。旅行中、なにかと張り詰め気味の気持ちがほっと緩んだ。