#6 薄闇で感じた唐津の街の風情。唐津城が見せた2つの表情

2308九州/
  1. ホーム
  2. 2308九州
  3. #6 薄闇で感じた唐津の街の風情。唐津城が見せた2つの表情

JR筑肥線で唐津駅に着いたときには21時を回っていた。

少々遅くなってしまったなというのが正直な感想だった。博多駅を出たのはだいたい19時半ごろだったから、この時間になるのは分かっていた。だが、この日は早朝にフェリーで九州入りし、それから動きっぱなしだったので早く休みたかったのだ。

唐津はそれほど大きな街ではないから、この時間になると街は暗く、そんな中を歩いて宿までたどり着かなくてはならないのも心許なかった。おまけに今回は歩いて30分もかかる場所に宿を取っていた。予約する際には「30分くらい楽に歩けるだろう」「水辺が近くて眺めが良さそうだ」などと考えていたのであろう。その時の判断が恨めしい。暢気な想定を現地で悔やむことは数多い。だが何度繰り返したところで、反省することはしないのである。

宿を目指して路地を抜けていく。視界は薄闇に包まれていたが、その向こうに唐津の街の風情が潜んでいることを感じ取ることはできた。明日散策するのが楽しみだ…。宿までの道のりにポジティブな材料を見つけられたのは当時の私にとって救いだった。

市街を抜けた。すると視界の上方に突然、ぼうっと明るく輝くものが現れた。それはライトアップされた唐津城の天守だった。城としては小ぶりな部類に入るのだと思う。だがその姿は、唐津のシンボルとして精一杯背筋を伸ばして頑張っているように感じられ、いじらしくも思えた。

唐津城の前を過ぎ、松浦川の河口に掛かる舞鶴橋に差し掛かった。街灯が減り、一層闇が深くなる。川の上は風が強かった。時折突風が私を襲い、その度に腕で目を覆わなければならなかった。唸るような音は恐怖心を掻き立てた。

そんな時ふと後ろを振り返ってみると、そこには光り輝く唐津城の姿があった。まるで背後から見守っていくれているようだ。先ほどは可愛らしく思えた姿が、急に心強く思えてきたのだった。

2308九州_夜の唐津城