2024年冬、島根県の温泉津を訪れた。島根県中部、太田市に属する。
温泉津、と書いて「ゆのつ」と読む。列車のアナウンスに寄ればアクセントは平板だった。
その名の通り温泉が湧く地で、温泉町がある。重伝建(重要伝統的建造物群保存地区)にもなっているが、温泉町としては唯一の例だそうだ。
駅から10分ほど歩くと温泉町へ続く路地の入口がある。道幅は車がちょうどすれ違えない程度に細く、少々入り組んでいる。道に沿ってレトロな外観の該当が連なり、石州(石見国)独特の赤い屋根瓦を葺いた軒を柔らかく照らす。素晴らしい雰囲気だ。
また、それにも増して印象深かったのはその静けさだ。周囲をちょうど山に囲まれているだろうか、「静寂とはこういうことだったか」と久しぶりに思い出すような心地だった。