吉野ケ里歴史公園の見学を終えたことで、今日の主な予定は消化できた。次は宿泊のため、一旦博多に戻る行程になっている。
九州最古の駅・鳥栖駅
吉野ケ里公園駅から博多に行くには、まず長崎本線に乗り、途中、鳥栖(とす)駅にて鹿児島本線に乗り換える。
鳥栖駅は九州でも最も古い駅の一つで、開設は1889年(明治22年)に遡る。今はJRの駅だが、当時は九州鉄道の駅だった。九州鉄道は日本で最も早い時期に開業した私鉄の一つである。鳥栖駅は途中で移転や建て替えを経験しているものの、日本の鉄道の黎明期を知る駅と言ってよいだろう。
鳥栖駅では乗り換えの待ち時間があるので改札の外に出てみた。許される時間は10分程度になるが、その佇まいを味わっておきたいと思った。
鳥栖駅の佇まい
外に出て鳥栖駅の外観を撮影した。
ちょうど、ほどよく日が傾く良い時間帯だった。
屋根の色の渋さが印象に残っている。
電光掲示板
乗るべき電車の発車時刻が迫ってきた。
駅のホームに戻るために再度改札をくぐる。その際、行き先表示の電光掲示板が目に目に留まった。
発車時刻と行き先を示す文字列がずらりと並んでいる。鳥栖駅からは東西南北それぞれの方面に路線が伸びており、特急、快速、普通といった種別がすべて停車するため表示さあれる情報量は非常に多い。文字も色とりどりで大変賑やかだ。
それらを眺めていると、行ったことのない地名、乗ったことのない列車の名前が次々に目に飛び込んできて、胸がときめいた。
あの電車に乗ったら、どんなところを通って、どれくらいの時間で、どんなところに着くのだろう…。瞬間、空想が頭をよぎり、ぞくぞくとした感覚が腹の底の方から立ち上ってくる。
……だが、今回に関してはもう既に行き先は決まっているし、間もなく電車に乗り込まねばならない。
私は気まぐれな衝動を鎮火させるよりなかった。
旅としてはすこぶる順調であるものの、一方で、事前に宿を確保し、ルートも確認しておいた自分のほどほどの周到さが恨めしく思えた。
これだけの選択肢を目前にして、気ままな進路選択を許されないこの状況は、少々つまらなく思えたのだった。