2024年のゴールデンウィークは埼玉県に行ってみることにした。前々からポツポツと行ってみたいところが浮上してきていて、ある程度数がまとまってきたので、ちょうど良い機会だと思ったのだ。
現在は関西に住んでいるので、まずは新幹線で東へ向かう。最初の目的地は秩父だ。品川で乗り換えて山手線で池袋に向かい、そこから西武特急に乗るつもりだった。
新幹線が発車して京都を過ぎたあたりで、「そういえば特急の予約をしていなかった」と思い、その場で空席照会を行ってみた。ところが、まさかとは思ったのだが、乗りたい時間帯の池袋~秩父間の特急がすべて満席なのだ。前後の便を再検索してみても同様の結果だった。
秩父は人気のある観光地であることは知っていた。だが、所詮(失礼!)埼玉県なのだし、なんとかなるだろうとタカをくくってもいた。だが、事実は異なっていた。ゴールデンウィーク中の秩父は、池袋から東京都民が大挙して押し寄せようとする最中にあるのだった。平時の池袋は埼玉県民によって植民地化されていると聞くが、それとは真逆だ。僕は認識を改めるのと同時に、自らの不明をまざまざと思い知らされることになった。
ひとまず、今現在の状況を如何にするかが問題だ。特急の便をさらに後ろにずらせば空席は出てくるのだが、その後に控えている予定に支障が出る。その予定とは、秩父鉄道で運行されているSL・パレオエクスプレスに乗車することだった。今回の旅の1日目のメインイベントと言って良い。この予定が頓挫するのは避けたかった。ちなみに、こちらの予約に関しては早々済ませていた。だったらその時に新幹線と西武特急も手配しておけば良かったものを…。
僕は必死になって頭を巡らせた。そこで閃いたのが、特急券を分割することだ。すなわち、池袋駅から途中駅、途中駅から秩父駅という2枚の特急券を購入し、特急に乗るのだ。通しの特急券は無理でも、これならまだ空席があるかもしれない。この場合、途中駅で座席を移動する必要が発生するが、贅沢は言っていられない。
途中駅をどこに設定するかが重要な問題だ。できるだけ乗降が多い駅が望ましい。例えば所沢はどうだろう。急ぎ調べてみたが、池袋~所沢間、所沢~秩父間の両方が満席だ。想像を遥かに超える混雑ぶりだ。絶望が頭をよぎる。
さらなる可能性を試してみる他手段は無い。飯能では? 飯能を観光の目的地にする人は多いはずだ。本命ムーミンバレーパーク、対抗ヤマノススメ聖地巡礼。
果たして、飯能~秩父間の特急にはまだ空席が残っていた。最後の1席である。逸る気持ちで予約を完了させた。
まだ問題は残っている。飯能までどうやってたどり着くかということだ。池袋~飯能の特急は満席である。
そこで次なる閃きを得た。飯能までは急行で向かえばよいのだ。池袋に到着後、乗り換え時間が若干シビアになるが、スムーズに行けば飯能で特急を待つことができる。池袋駅は何度も利用したことがあるし、大丈夫だろう。冷静になってみれば、当然の選択肢であった。
なんとか、行程をまとめることができた。あやうく、一日目全部の行程を組み直すことになるかとハラハラしたが、結果オーライとなった。乗り換え検索の結果画面を何度か見直し、問題のないことを確認したところで、ようやく気持ちが落ち着いてきた。新幹線は既に静岡県に入っている。
次第に、先程のことを振り返る余裕も出てきた。途中駅から特急に乗る発想ができたところがターニングポイントだった。「これは結構旅慣れていないと思いつかないのでは?」などと自画自賛する気分にもなっていた。だが、本当に旅慣れている人は、そもそも特急の予約忘れなどしないのである。
ともあれ、こうして埼玉への旅は始まった。