#5. 旅の小昼飯「みそポテト」|秩父鉄道・三峰口駅にて

2405埼玉/
  1. ホーム
  2. 2405埼玉
  3. #5. 旅の小昼飯「みそポテト」|秩父鉄道・三峰口駅にて

SLパレオエクスプレスに揺られ、終点の三峰口に降り立った。次はバスへと乗り継ぎ三峯神社へと向かう。予定していたバスの時刻まではまだ1時間ほどあったので、駅近くの蕎麦屋に入って昼食をとった。たしか冷やし蕎麦かなにかを食べたと思う。氷がたくさん入っていて、少し体が冷えた。

三峰口駅前の蕎麦屋_2405
三峰口駅前の蕎麦屋・福島屋さん

バスの時刻が迫ってきたので、蕎麦の代金を支払い、店を出た。バス乗り場まで小走りで向かう。別にそうする必要はなかったのだが、こういうときはなんとなく焦ってしまう。

バス停に着き、バスの到着を待つ。ところが、定刻になってもバスは一向にやって来ない。もしや時刻表を見間違えたのではないか――と不安に駆られ、時刻表を何度となく確認し直したが、間違ってはいなさそうだ。

そのまま30分ほど経っただろうか。ようやくバスはやってきた。扉が開き、列の先頭の乗客がようやくか、といった風情で乗り込もうとした。だがそこで、バスの運転手は予想外の言葉を告げた。なんでも、三峯神社への道路が大変な渋滞で、駐車場に入るのに2~3時間掛かるというのだ。他の乗客たちにも動揺が走ったように見えた。

「それでも乗りますか?」と運転手が聞いてくる。せっかくここまで来たのだから、とバスに乗り込んでいく人もいたが、僕は車内に閉じ込められたまま長時間過ごすことを想像して、たじろいてしまった。ここでもGWの混雑の凄まじさを味わうことになろうとは。結局、バスは僕を乗せることなく出発した。

僕はその場に取り残されると同時に、これからやるべきことを失ってしまった。どうしようか…、率直に言って、近場に見て回るようなめぼしいものはなさそうだ。思案の末、今日のところは大人しく秩父の中心部に引き返すことにした。早めに宿にチェックインし、いったん荷物を置いてから、また周辺を散策をするのも悪くないだろう。

秩父中心部へは秩父鉄道を使って、来たルートを引き返すことになる。差し当たっての問題は、次の列車まで時間が結構空いていることだ。秩父鉄道は本数が少ない。とりあえず駅併設の簡易な露店で一服することにした。先程食事をしたところだが、他にやることもないので仕方がない。

そこでは秩父の名物だという「みそポテト」を注文してみた。衣をつけて揚げたジャガイモに甘い味噌ダレを掛けたものだ。味は素朴で(というか見た目通りで)、決して悪くない。それよりも、イモにミソという取り合わせが、なんというか、埼玉県らしいというか、言葉を選ばずに言えばいかにも田舎臭い。悪く言うつもりは毛頭なく、むしろ、そういうところが僕は好きだ。「もうダ埼玉なんて言わせない!」と意気込んでおいて、根本的なところでは垢抜けきれないところが、もはやいじらしく思えるような気がする。

みそポテト@三峰口駅_2405
秩父名物「みそポテト」

みそポテトのことは農林水産省のwebページ(『うちの郷土料理』)に記載されていた。正真正銘の郷土料理だ。観光用に開発された、いわば作り物のご当地料理とは一線を画する。農作業の合間に食べる軽食を小昼飯(こぢゅうはん)というそうで、その定番料理のようだ。さながら今回は、「旅の小昼飯」といったところだろうか。みそポテトを食べたりスマホでマンガを読んでいるうちに、列車の発車時刻が近づいてきたので、その場を離れた。

結局、三峰口駅くんだりまでやって来てしたことといえば、そばとみそポテトを食べたことだけだ。なんともパッとしない行程となった。とはいえ、もしあの時バスに乗っていたとしても、渋滞のせいで観光する時間的余裕はほとんどなかっただろうし、それならまだしも、下手をすれば帰る手段さえ失っていた可能性だってある。それを思えば、三峰神社を諦めたのは英断だった、と思いたい。

秩父鉄道・三峰駅口_2405
秩父鉄道・三峰口駅