「芝桜の丘」を見てまわった後、続いて「見晴らしの丘」へ向かった。
その日は5月とはいえ、日差しがとても強く、じりじりと肌を焼かれるようだった。「見晴らしの丘」へ向かう小道では、木々の葉がその日差しを受け、新しい緑をいっそう色鮮やかなものにしていた。葉とその隙間からから差し込む光とが、互いに強烈な主張をしあっていた。
「見晴らしの丘」は、その名の通り、秩父の街を一望できるスポットだ。僕は旅行中、機会があればこういった展望台的な場所に積極的に足を運ぶ。高い場所から、街を見下ろすのが好きなのだ。そこで、これまで歩いてきた道や、訪れた場所を景色の中から見つけるのは楽しい。
「あのあたりが駅の周辺だな」「あの建物、さっき通りがかったな」などと、実際の景色と頭の中の地図とを照らし合わせながら、位置関係を確認し、必要に応じて修正していく。時には「これからあそこに行くのだな」と、まだ訪れていない地点に思いを馳せる。それもまた面白い。
僕の旅行は予定が詰まりがちで、気がつけば歩きっぱなしになっている。知らず知らずのうちに心も張り詰めていく。そんな中、このような場所に来て、景色を眺めながら旅の記憶を整理する時間は、ふっと気持ちを緩められる貴重なひとときでもある。