翌朝、目が覚めると、体の疲れはすっかり取れていた。夏場でも冷涼な高原の空気のおかげで、よく眠れたからだろう。
隣のベッドでは、友人はまだ眠っていた。昨日の長距離運転の疲れがまだ残っているのかもしれない。
朝食まではまだ時間があった。友人には申し訳ないが、せっかくなので、ひとりで散歩に出てみることにした。

簡単に身支度を整えた後、カメラを持ち、そっとペンションの玄関を出た。空はまだ暗く、辺りはうっすらと朝靄に包まれている。夜の間にまた少し雨が降ったのだろうか。森の空気がひんやりと頬に触れた。
道に沿って歩き、森へと入っていく。おそらくは昨晩ホタルを探して歩いた道なのだろうが、確信が持てない。闇夜の中で見た景色とは、それほどまでに印象が異なっていた。

僕は目に留まった景色を写真に収めながら森を歩いた。ミステリアスなシダの葉、小さいながらも荒々しさを秘めた沢の流れ…。
朝露に濡れた可愛らしい樹木の芽や松ぼっくりは、朝の柔らかい光の中に包まれつつも、未だ眠りの中にあるように見えた。

森は今この瞬間、世界で最も新しい空気に満たされていた。その清潔さを、ただ一人、自分だけが享受している…そんな気がした。
日が昇り、森が目覚めるまでの束の間、僕はこの上なく贅沢な時を過ごした。

部屋に戻ると、友人がすでに目を覚ましていた。ひとっ風呂浴びてきたようで、すっきりとした顔をしている。
僕は先ほど見てきた朝の森のことを、彼に話した。