久しぶりに、大学の友人と山に登る計画を立てた。
行くとしたら信州が良いな、と思っていた。山小屋で一泊、というのもやりたかった。以前、立山の一の越山荘に泊まったことがあるのだが、その時に見た夕焼けが忘れられない。
山小屋泊ができて、登るのにそれほど難しくない山であることを条件に、登る山を探した。
当初の候補としては、木曽駒ヶ岳が挙がった。ロープウェイに乗って標高2,612mまで登ることができ、そこからは片道約2時間で山頂に到達できる。山上には山小屋があり、宿泊もできる。
そこで星も見られたらいいな、と僕は思った。しんと張り詰めた冷たい空気の中にたたずみ、満点の星空を見上げる自分の姿を想像した。
プラン実行日が近づいてきた頃、スケジュールの確認をしていた僕のもとに、悪いニュースが飛び込んできた。駒ケ岳ロープウェイへのアクセス道路である県道駒ヶ岳公園線が、土砂崩れのため通行止めになっているというのだ。
それと同時に、ロープウェイ自体も運休となることも知った。近日中に復旧する望みは薄そうであることが、ウェブサイトの文言から察せられた。
僕は取り急ぎ、予約していた山小屋をキャンセルした。おそらく同じ境遇の人々からのキャンセル連絡が殺到しているであろう。やむを得ないこととは言え、申し訳ない気持ちになった。
こうして駒ケ岳への登山計画は頓挫したわけだが、友人にはすでに予定を明けてもらっていたため、代替となるプランを考えなくてはならなくなった。再度のリサーチの結果、浮上してきたのが霧ヶ峰だった。
木曽駒ヶ岳へは名古屋方面から車で行くつもりだった。それと比べ霧ヶ峰へは、さらに北へと足を伸ばす必要があり、1時間半程度は所要時間が増える。車を出してくれる友人に、申し訳なくもその旨を伝えたところ、快く承諾してくれた。
ちなみに、運転は友人が、宿の手配や山行スケジュールはペーパードライバーである僕が担当するというのが、いつからかの恒例となっている。
当日、我々は岐阜羽島駅に集合し、出発した。車は中央道を進む。岐阜県を出、愛知県の北部を掠めるように東へ進み、再び岐阜県に入る。そして恵那山トンネルを抜けると、ついに長野県だ。
伊那盆地を北上する途中、我々はサービスエリアに寄って食事休憩を取った。僕は味噌ラーメンを選んだ。想像していたよりも本格的で、美味しいラーメンだった。

我々は再び出発した。車はさらに北上を続け、諏訪湖サービスエリアに着いた。その名の通り諏訪湖が一望できる。僕はその静かな水面を眺めながら、これから訪れる場所のことを思い浮かべた。
次いで遠くを見やると、向こうの山々にはどんよりとした雲が垂れ込めていた。天気が心配になるところだが、ここまで来てしまったらひとまず進んでみるしかないだろう。
