宿泊するために熊本駅に着いた。
熊本市が約80万人を擁することから考えると、駅の周辺はかなり閑静な印象だ。約60万人である鹿児島市の鹿児島中央駅の賑々しさとはかなり対象的である。熊本は真面目なキャラクターの街なのかもしれない。なんとなしにそう思った。
宿は駅の近くに確保してあった。一旦荷物を置き、身軽になってから食事ができる店を探す。
先ほど述べた印象の通り、駅の周辺は比較的静かで、飲食店も少ない。駅の位置と街の中心部が離れているパターンであろうと思った。(実際、繁華街は2〜3キロ離れた熊本城の周辺にある。)
率直に言って、その日はもう疲れていたし、繁華街まで歩いてその上で店を選び、初めての店に入るための勇気を生むための体力は残っていない。
結局、旅先でつまらない選択かもしれないが、駅ビルの中の飲食店で済ませることにした。店を探して街をさまよう必要もないし、大外れを引く可能性も低い。そう思うとむしろ旅の最中に取るべき優良な選択であるようにも思えてくる。ぱっと目についた「うまや」という店に入った。
せっかくなら熊本名物的なものを食べたかった。何の店かは調べていなかったが、和食っぽい佇まいと、「うまや」だからきっと馬刺しは食べられるだろうと思った。実際には焼き鳥がメインの店だった。
カウンター席に座り、第一陣の注文を済ませる。お通しのキャベツが運ばれてきた。3種類のタレをつけて食べる。続いて注文した食べ物も出揃ってきた。
まず焼き鳥5本盛り、ざる豆腐、焼酎の水割りも頼んだ。(記憶が曖昧だが。)
焼き鳥は非常に美味しかった。肉の味が濃く、歯ごたえも程よく締まっている。みつせ鶏という佐賀県のブランド鶏を使っていると、店内メニューに書いてあった。そういえば、九州の駅構内の広告でときおり見かけた。振りかけられた塩からは旨味が感じられ、良い仕事をしている。この時の体験がきっかけで、その年のふるさと納税は返礼品としてみつせ鶏がもらえる佐賀県吉野ケ里市を選んだ。
焼酎は白岳しろを選んだ。これもうまかった。すっきりとして、日本酒と共通する香りが印象に残っている。料理に合う。普段はアルコールはほとんど飲まないのだが、トライしてみて良かった。米焼酎は好みに合っているようだ。私自身酒には弱いので、水割り一択になってしまうが、それでも十分だ。
アルコールが入り、料理もうまいので気分も良くなってくる。自分の場合、一人でも十分楽しめる。というより、一人でしか得られない楽しみがある。
背後からテーブル席の会話が聞こえてくる。おじさん3人、大学の同窓生かと推測する。基本的な話題は病気自慢というか、健康にまつわるものだ。「冬は体がキュッと縮こまるから、やっぱり血圧も高めだ」とか、そんな話だ。内容は他愛もないものだったが、話し方にどことなく品の良さというか、知性めいたものが感じらる。会話の噛み合いう具合が、聞いていて小気味よかった。おじさんたちの会話が、旅先での食事にディティールを書き加えてくれた。
さて、2サイクル目の注文が運ばれてきた。食べたかった馬刺し、そして辛子蓮根。いずれも熊本を代表する食べ物だ。当然のごとく焼酎に合う。米焼酎では値段からしてもう少しランクの高そうな鳥飼も置かれていた。次はこちらを試してみたいと思っている。