昨日から宿泊していたホテルをチェックアウトし、大橋駅から西鉄に乗った。
今日一日どう過ごそうかと考えたとき、目ぼしいスポットを調べてみたがどうもピンとくるものがなかった。昨日の疲れが抜けていないせいだろうか。披露宴で飲んだ酒類が少し残っている気もする。
そこで、気ままに散策でき、リフレッシュできる場所を探した。福岡市動植物園という場所を見つけた。植物園は好きだ。だが、今日は定休日だった。
僕は「海の中道海浜公園」に行くことにした。「海の中道」というのは博多湾と玄界灘に囲まれた砂州状の地形のことで、そこにある「海の中道海浜公園」は四季の花や動物と触れ合えるスポットになっているという。(参考:海の中道海浜公園公式サイトhttps://uminaka-park.jp/guide/introduce/)ここからだと少し距離があるが、時間は丸一日、たっぷりある。
鉄道でアクセスする場合、最寄り駅はJR香椎線の「海ノ中道駅」となる。大橋駅からだと何回か乗り換えが必要だった。駅を出て少し歩くと入場ゲートがある。料金を支払って中に入ると、広々とした敷地が目の前に広がった。今日は天気も良い。美しい景色に出会えそうな予感がする。
園内に入って最初に目に留まったのは「あじさいの小径」に咲く紫陽花だった。私が住んでいる地域では、紫陽花は青色をしている。だが、「海の中道海浜公園」の紫陽花たちは、どれも鮮やかな紫色をしていた。考えてみれば、この色はほとんど見た経験がない。
紫陽花が土壌のpHによって花の色を変えるということは、よく知られていることと思う。酸性の土壌では青色、アルカリ性では紫色やピンク色に変化する。
僕はふと、九州北部には石灰岩の産地が多いことを思い出した。平尾台は日本三大カルストとして有名だし、福岡市に本社を置く麻生セメントはその名の通り石灰岩の採掘を生業にしている。
石灰は水に溶けるとアルカリ性を示す。砂土が堆積してできた「海の中道」の土壌がアルカリ性なのは十分想像できる。
これらの石灰岩はどこからやってきたのだろう。手元にある『福岡のトリセツ(昭文社)』によれば、平尾台を形成する石灰岩は、”古生代石炭紀前期からペルム紀末期(3億4000万年~2億5500万年前)に、海洋の赤道付近で海底火山(海山)上に石灰質生物の殻が堆積してできた”そうである。
今目の前で咲いている紫陽花の紫色が、太古の生物や地殻活動の積み重ねと繋がっているのかもしれない。そう思うと、壮大な自然の物語の一端を垣間見たような気がして、知的なときめきが胸に広がっていった。