この日の夕食はジンギスカンだ。店の選定や予約は幹事さんがやってくれた。ありがとうございます。
待ち合わせメンバーがそろったところで入店した。店内は香ばしい煙と肉の香りが充満し、いかにもうまそうな雰囲気が漂っている。
それに煽られてか、一行は席につくと、待ち切れない様子で、我先にと口々に注文を発していった。
一方、僕はその流れに乗れないでいた。食欲が沸かないのだ。間の悪いことに、僕の胃は不調と痛みを訴えていた。
最近になって自覚したことだが、自分は胃が弱い。
長め(3~4日以上)の旅行では、何日か過ごすうち、だんだんと胃のあたりが重たくなって、食欲が無くなってくる。
外食が多くなり、普段と変わったものを食べる量と頻度が増加することがたたっているのだろう。
特に注意が必要なのが乳製品だ。この間クリニックで検査をした結果によれば、乳に対して軽度ではあるがアレルギーがあるらしい。
これまでにも、牛乳を飲んだ後には腹が重たくなることがあった。長らく気に留めていなかったのだが、これがアレルギーによるものだと分かってからは乳製品の摂取を控えるようにしている。
だが、それは日常生活においての話であり、旅行中では別だ。
とりわけ今回は北海道に来ているので、アイスクリームにチーズにバターと、惹かれるものはごまんとあり、つい試してみたくなる。
そういえば、つい先程風呂上がりにアイスクリームを賞味したところだった…。
その結果が、現在の有り様である。
注文した肉が次々に運ばれて来て、次々に焼き上げられていく。
視覚も嗅覚もうまそうだと言っている。僕はおずおずとそれらを口に運ぶ。
味覚もうまさに賛同した。だが、胃だけが反対票を投じている。楽しい旅の思い出は棄却されてしまうおそれが出てきた…。
そんなとき、箸が進んでいない様子を見つけてくれたのか、友人が声を掛けてくれ、薬を分けてくれた。六君子湯という漢方で、胃腸虚弱・食欲不振に効くとのこと。
ありがたく飲んでみると、これがてきめんに効いた。これによって満場一致となり、「うまい」という結論に至ることができた。
お陰で、ジンギスカンが苦い思い出にならずに済んだのだった。ありがとうございました。
これ以来、六君子湯は我が家の常備薬となっている。